ことを発見しました。
「どうも仕方がない」
と呟《つぶや》いて草鞋《わらじ》の紐を締め直しました。その時に、つい耳もとで、どうどうと水の鳴る音が聞えます。草鞋を結び終って背後を見ると、雲の絶え間に一条の滝がかかっている。さのみ大きな滝とは見えないが、懸崖《けんがい》を直下に落ちて、見上ぐるばかりに真紅《しんく》の色をした楓《もみじ》が生《お》い重なって、その一ひら二ひらが、ちらちらと笠の上に降りかかって来ました。
「あれが蛇滝でございます」
と言う声で気がつくと、そこは小名路《こなじ》の宿でもなければ、小仏の峠道でもありません。中仙道の板橋の宿場|外《はず》れの旅籠屋の、だだっぴろい陰気な座敷の一間で、眼のさめた時に二番鶏がしきりに鳴いていました。
「まだ寝ないのか」
 竜之助が驚かされたのは、暗い行燈の下に夜もすがら、まんじりともしなかったらしい女は、思い余って忍び音に泣いているところでありました。
「どうしても眠れません」
 何だか知らないが、その声が竜之助の心を嗾《そそ》りました。
「生きている間は眠れまい」
と言ったのは、自分ながら謎《なぞ》のような言葉です。
「本当でございま
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