威勢よく駈けて通る。
 なんにしても、夥《おびただ》しい急ぎ方だと思いました。
「その駕籠はどこへ行くのだ」
 尋ねてみたけれど、駕籠屋は振返っても見ません。
 しかしながら、どうも見たような駕籠である。竜之助は駕籠に引添うて走りはじめました。まもなく駕籠は或る家の軒下へ立ちました。そこは、ちょっとした宿場|外《はず》れの、木賃宿《きちんやど》とも思われるほどの宿屋の軒下であります。
 これも見たことのあるような行燈《あんどん》がかかっている。筆太に「若葉屋」と記して、側面には二行に「千客万来」と認《したた》めてあるのを明らかに読むことができるのであります。
 駕籠は、その掛行燈の下に据《す》えつけられると共に、駕籠屋共は、いずれへ行ってしまったか、影も形も見えません。
 竜之助はぜひなく、その宿屋の雨戸をハタハタと叩きました。行燈は、まだまばゆいほどに点《つ》けておくのに、雨戸は、もう一寸の隙間もなく締めきって、叩いてみても、返事もありません。
「お連れさんは?」
 当惑して立ちつくしていることやや暫く、すると中から声がありました。
「連れは女だ」
と竜之助は答えました。
「どうぞ、
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