ろどろした呻きの声であります。
 それを篤《とく》と聞き定めた弁信は、消えた提灯を片手に、飛鳥の如く走り出しました。不思議となにものにも躓《つまず》くことなく、声のしたところへ一足飛びに走って来て、
「もし、先生、そこにおいでになりましたか。女のお方も、そこにおいでなさいますね。なんにしても、お怪我が無くてよろしうございました。けれども、あの足音をお聞きなさい、あの人の声をお聞きなさい、大勢の人がまた尋ねに参ります、今度つれて行かれたら、もう助かりませぬ、早くお逃げなさい。先生、わたくしのことは御心配にはなりませぬよう、あなた様は早く、その女のお方を連れてお逃げ下さいまし、先生がお逃げにならなければ危のうございます、早くこの場をお逃げなさいまし。あの通り人の足音と声とが近寄って参りました、お聞きなさいまし」

         十六

 弁信から逃げろと言われたことが、竜之助にとって思い設けぬ暗示となりました。女もまた、そう言われて、一にも二にもこの人を頼る気になったらしい。
 頼ってみるとその人は、意外にも盲目《めくら》の人でありました。強いと思った人は、人並より弱味を備えた人であっ
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