わたしどもが悪いから殺して下さいと、あやまっているではございませんか、あやまっている者を殺したって仕方がないではございませんか」
 弁信は提灯を振りかざしながら、しきりにその人に縋《すが》りついて、もがきました。
「お前さんにはわからない、ああしてやらなければ、みんなのためにならないのです、だから誰もお詫《わ》びをしてやろうというものは一人もないのだ、それでいいのだから、引込んでおいでなさい」
 そう言って温厚なのは離れて弁信をなだめているが、血気なのは男女を取って押えて、その見せしめのためというはずかしめを与えんとしていますが、盲目である弁信には、その振舞がわかりません。しかしながら、暗い中の一方には焚火がしてあって、その明りで見ると、光景は狼藉《ろうぜき》にして酸鼻を極めたものと言うべきです。
 男女二人をこの原まで誘《おび》き出して来て、泣いて拒《こば》むのをむりやりに、一糸もつけぬ素裸《すはだか》に剥《む》いてしまったものか、これから剥こうとするものかして、揉み合っているところです。遠く囲んでいる見物の者は、息を凝《こ》らしてその体《てい》をながめて一語を出す者もありません。

前へ 次へ
全221ページ中188ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング