れど、こう言って歎願しているのは男の声です。
「見せしめのためだからこうしてやるのだ、俺たちを恨んじゃならねえぞ」
 これは、いきり立った大勢の中から起る声です。
 弁信ならずとも、感づくことでありましょう。路傍の原っぱで、大勢の者が、男女二人を捉えて何かの制裁を加えているところです。女が、ただ泣いている、男が只管《ひたすら》にあやまっている、大勢が見せしめのためだということを聞けば、それも直ちに合点《がてん》のゆかねばならぬことで、ここに二人の男女が道ならぬ行いをして、大勢のために極端な私刑を加えられようとしているところに紛《まぎ》れもありません。
「もし、皆さん、少々お待ち下さいまし、どういうわけか存じませぬが、わたくしは通りかかった盲目《めくら》の者でございます」
 お喋《しゃべ》り坊主の弁信は、どうしても持って生れたお節介《せっかい》をやめることはできないものと見えます。そこで九曜巴の提灯を振りかざして、大勢の中へ飛び込んだものです。
 けれども、それは受入れらるべくもありません。この制裁は、単純なる意味の喧嘩や口論とは違って、これは土地の風儀で、重《おも》なる人が先に立ってや
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