ね起きました。実際われわれは、夢を見つけているからそんなに驚かないけれども、物心を覚えて、はじめて夢を見た人にとっては、夢というものがどのくらい不思議なものだか想像も及ばないことです。
 米友とても、この歳になって、初めて夢を見たわけでもあるまいが、この時の狼狽《あわ》て方は、まさに初めて夢というものを見た人のようでありました。
 そうしてはね起きて、手さぐりで燧《ひうち》を取って行燈《あんどん》をつけ、例の枕屏風《まくらびょうぶ》の中をのぞいて見ると、そこに人がおりません。
「ちぇッ、よくよくだなあ、まさかと思った今夜もまた出し抜かれちまった」
 米友はワッと泣き出しました。米友が夢を見ることも極めて珍らしいが、泣き出すことはなおさら珍らしいことであります。米友は憤《おこ》るけれども、泣かない男です。けれどもこの時は、手放しで声を立てて泣きました。
 昼のうちに、あれほど打解けて話しておったその人が、まさか今晩は無事に寝ているだろうと思ったのに、もう出かけてしまった。昨夜の疲れと、その安心とで、ぐっすりと寝込んでしまったおれは、なんという不覚だろう。それに、今まで滅多には見たこともな
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