》の音もするようです。あちらの方から、馬を打たせて来るものがあることは疑うべくもありません。
まもなくそこへ現われたのは、馬子に曳《ひ》かれた二頭の馬でありました。
峠を越ゆる馬は、一駄に三十六貫以上はつけられないのだから、荷物の重量としてはそんなに大したものとは思われないが、それに附添っている武士が三人あります。そうして馬の背の上に、梅鉢の紋らしいのが見えるところによって見れば、これは、やはりこの街道の神様である加州家に縁《ちなみ》のある荷馬《にうま》であることも推測《おしはか》られます。
それと見た南条力は、ズカズカとその馬をめがけて進んで行きました。無論、五十嵐甲子雄もそれに従いました。
これは、馬子も宰領も、すわやと驚かねばならぬ振舞です。この二人だからよいようなもの、そうでなければまさに山賊追剥の振舞であります。
「待ち兼ねていたわい」
南条力は低い声でこう言って馬の前に立ち塞がると、不思議なことに馬も人も更に驚く風情《ふぜい》はなく、ハタと歩みをとどめてしまって、
「まず、上首尾」
と言った声は、前なる馬子の口から発せられました。落着いたもので、馬子風情の口吻《く
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