落着かないことがあるらしく、
「間違いはございませんが、念のためですからこれから私が、もう一ぺん峠の宿を軽井沢まで走って見て参ります」
「御苦労だな」
こうして、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百は得意の早足で、峠の宿の方へ向いて行ってしまいました。そのあとで南条は、五十嵐にむかい、
「こんな仕事には誂向《あつらえむ》きに出来ている男だ、何か、ちょっとした危ない仕事がやってみたくてたまらないのだ、小才《こさい》が利いて、男ぶりもマンザラでないから、あれでなかなか色師《いろし》でな、女を引っかけるに妙を得ているところは感心なものだ」
こんなことを言って笑っていると、五十嵐は、
「女によっては、あんなのを好くのがあるのか知らん、どこかに口当りのいいところがあるのだろう」
「当人の自慢するところによると、あの片一方の腕を落されたのも、女の遺恨から受けた向う創《きず》だと言っている。これと目星をつけた女で、物にならぬのは一人もない、なんぞと言っているところがあいつの身上だ」
この時分に峠の宿で、また鶏が鳴きましたけれども、夜が明けたというわけではありません。
いわゆる、碓氷峠《うすい
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