さんの心は善かったものでございますから、阿闍世王の供えた百斛の油が燃え尽きてしまっても、貧しい婆さんの二銭の油は、決して消えは致しませんでした、消えないのみならず、いよいよ光を増しました、暁方《あけがた》になって目連尊者《もくれんそんじゃ》が、それを消しにおいでになって、三たび消しましたけれど、消えませんでございました、袈裟を挙げて煽《あお》ぐとその燈明の光が、いよいよ明るくなったと申すことでございます。それほどの功徳《くどく》も心一つでございますのに、それに、わたしがああやって心願を立てて、毎晩毎晩点けにあがる高燈籠が、あの晩に限って消えてしまったというのは因果でございます、業でございます、わたしの徳が足りないんでございます。徳の足りないものが、業《ごう》の尽きない身を以てお山を汚していることは、お山に対しても恐れ多いし……わたし自らの冥利のほども怖ろしうございますから、それでわたしは、お山をお暇乞《いとまご》いを致しました、皆様がいろいろにおっしゃって下さいましたけれども、わたしは自分の罪が怖ろしくて、お山に留まってはおられませんでございます。皆様お大切に、これでお別れを致します…
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