に、破牢のあったのを知ってるだろうな、牢破りの」
「知ってる、知ってる、それがどうしたんだ」
「その晩に、お前は甲府の町を、その手槍を担いで一文字に飛び歩いていたろう」
「それに違えねえ」
「その時だ――その時に、お前は命拾いをしているのを忘れやすまいな」
「命拾い? 命拾い?」
 米友は、そう言われて仔細らしく小首を傾けたが、ハタと自分の頬《ほっ》ぺたを打って、
「うむ、あれか」
「友造どん、あの時から、わしはお前を知っている」
 こう言われた時に、米友が再び躍り上って、
「この野郎!」
と一喝《いっかつ》しました。ここでこの野郎と言った意味はなんだかよくわかりませんが、今まで気のつかなかった疑問が、一時に解け出したような狼狽の仕方で、米友が、
「やい、起きてくれ、起きてくれ、ももんじい[#「ももんじい」に傍点]を煮て酒を飲ませるから、起きてくれ」
 机竜之助は蒲団《ふとん》をかぶって、あちらを向いて寝ました。
 ももんじい[#「ももんじい」に傍点]と酒とで、米友が誘惑を試みようとしても、起きる気色《けしき》はありません。
「友造どん、甲府でやった辻斬も、このごろ出歩いてやる辻斬も、
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