様の盲目《めくら》でございますよ、病人で盲目で、そうして辻斬をして歩きたがるのですから、全く、今まで私共は聞いたことも、むろん見たこともない悪者なんでございます」
 弁信が順を逐《お》うてスラスラと述べ立てるのを、役人も、辻番も、お蝶も、酔わされたように聞いていたが、なかにも米友が、
「あっつ、ムクがいねえ、ムクがどこかへ行ってしまった」
 いまさらに気がついて、再び地団駄を踏みました。

         十九

 その翌朝になって、弁信、お蝶、米友の三人ともに、役所から許されて帰ることになりました。
 一旦、鐘撞堂新道《かねつきどうしんみち》のお蝶の主人の家へ引取った米友は、それから出直して、どこへ行くともなしに歩きながら、
「どうも、わからねえ」
 その面《おもて》に一抹の暗雲がかかって、しきりに首を傾けながら歩くのです。ついには棒を小脇《こわき》にかかえたまま、両腕を組んで、
「わからねえ、わからねえ」
 やがて辿《たど》りついたのは、例の弥勒寺の門前であります。門へ入ろうとする途端に、
「やあ、ムク、ここにいたのか」
 出会頭《であいがしら》にバッタリと逢ったのは、昨夜柳原の
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