はい、ごらんの通り盲人でございますから、勘がよろしうございますから、それがわかりましたのでございます。こうして抱き締めて、苦しがっているところを刀を抜いて、一突きに突いて、なぶり殺しにしていたところが、私には、はっきりとわかりました」
「ナニ、お前は、いよいよ不思議なことを言う盲人だ」
検視の役人は米友の訊問を打捨てて、弁信の糺問《きゅうもん》にとりかかろうとします。お蝶は傍でハラハラするけれども、盲目の悲しさに、弁信は一向、役人の権幕《けんまく》を見て取ることができずに、
「私にも、あの時の心持が自分ながら不思議でなりませぬ、ナゼ、それと知ってあの時に、大きな声をして、あの人を驚かしてやらなかったのか、その心持がどうしてもわかりませんのでございます」
「いよいよ以て、お前は不思議なことをいう盲人だ、お前のその勘で見たことを、逐一《ちくいち》言ってみるがよい」
「ヘエ、申し上げましょう、お笑いになってはいけません、私の勘のいいことは、初めての人様はみんな本当になさらないことが多いんですから、どうぞ笑わないでお聞き下さいまし。それはこんなわけでございます、殺されたその女の方は、この近処
前へ
次へ
全206ページ中191ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング