相模屋方、友造」
米友はこう言って名乗りました。
「お前はこの夜更けに何用があって、こんなところへ通りかかった」
「エエ、それは、人を迎えに来て……」
米友が少々|口籠《くちごも》るのを見て、お蝶が横合いから口を出しました。
「わたしの帰りが遅いから、それでこの人が迎えに来てくれたのでございます」
そこで検視の役人は、お蝶と弁信をしりめにかけ、
「お前たちはまた何しに、こんな夜更けにここへ通りかかったのだ」
「エエ、それは……」
お蝶も、その返事に少し口籠ったが、そこは米友よりも上手《じょうず》に、
「この人のお帰りを送って参りましたものでございます、ごらんの通り、この人は眼が不自由なものでございますから」
「お前はどこのものだ」
検視の役人は改めて、盲法師の弁信に問いかけます。弁信は例の通り泣きそうな面《かお》をして、
「私は本所の法恩寺の長屋におりまする弁信と申して、こうして毎夜毎夜琵琶を弾いて市中を歩いている者でございます、琵琶は平家の真似事を致すんでございます、生れは房州の者でございまして、ついこのごろ、江戸へ出て参ったんでございますから、地理も不案内でございまして…
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