たった一人でおります、ひとりぼっちでございます」
「御飯の世話なんぞは、誰がしてくれるんです」
「みんな自分でやるんでございます、これから帰ってお茶漬を食べて、それから床を展《の》べて、ゆっくりと足を踏伸ばすのが、私の一日中の楽しみなんでございます」
「眼が不自由で、よくそんなことができますね」
「でも、近所の人様が可愛がって下さる上に、私は御方便に勘《かん》がようございますから、世間並みの盲目《めくら》のように不自由な思いは致しません」
「それでも、病気の時だとか、洗い洗濯だとかいうことはお困りでしょう、悪くなければ、わたしが時々行って、お世話をして上げるけれども」
「悪いどころじゃあございません、どうかいつでもおいでなすって下さいまし、お正午《ひる》前のうちは家にいるんでございますから。法恩寺の長屋へおいでになって、琵琶の盲目とお聞きになれば直ぐにわかりますから」
「それでは明日の朝参りましょう」
「どうぞおいで下さいまし。失礼でございますが、あなたのお家は、本所のどちらでございましたかね」
「わたしのところは本所の鐘撞堂新道《かねつきどうしんみち》なのです、鐘撞堂新道の相模屋とい
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