地へ参りました、ただいまのところでは法恩寺の長屋に厄介になっておりますんですが、ことによると近いうち、下総《しもうさ》の小金ケ原の一月寺《いちげつじ》というのへ行くことになるかも知れません、それはまだきまったわけじゃあございませんから、当分は法恩寺に御厄介になっているつもりでございます、またわたくしも訪ねて参りますが、茂ちゃんにも、どうか遊びに来るようにおっしゃって下さいまし。それでは今日はこれで失礼を致します」
 背に負っている琵琶を重そうに、楽屋番の前に頭を下げたのは、例の清澄寺にいた盲法師の弁信でありました。
「ようござんす、そう言いましょう。おっと危ない危ない、突き当ると溝《どぶ》ですぜ、板囲いについて真直ぐにおいでなさいまし、広い通りへ出ますから」
 楽屋番は出て行く弁信を、後ろから気をつけてやりましたけれど、そのあとで、
「いやに薄汚《うすぎた》ねえ坊主だ、どうしてこんなところへ入って来やがったろう、一人で入って来たにしてはあんまり勘が良過ぎらあ」
 ぶつぶつ言って、中へ引込んでしまったが、弁信から言伝《ことづ》てられたことは一切忘れてしまって、その趣を茂太郎に取次ごうとも
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