女は庚申塚の後ろへ身を隠しました。兵馬もそこにじっとしてはいられない気になって、男装した女の武家と同じように、その庚申塚の背後へ身を隠しました。
そうしているうちに提灯が、庚申塚の前へ通りかかります。
お供が提灯を持って先に立ち、真中に立派な羽織袴の武士、それにつづいて若党と見ゆる大兵《だいひょう》な男の三人づれが、この庚申塚の前を通りかかって、
「あ、悪いな、提灯が消えちまった」
ちょうど、時も時、その庚申塚の前まで来た時に提灯が消えてしまいました。これは別段に風があったというわけでもなく、また物につまずいたというわけでもなく、長い時間とぼされていた蝋燭《ろうそく》の命数がここへ来て、自然に尽きてしまったのだから是非もありません。
「立つは蝋燭、立たぬは年期、同じ流れの身だけれど……かね」
「もう、提灯は要《い》らんよ」
それは主人の声であるらしい。
「それでも、無提灯で帰るのは景気が悪いですからね、景気をつけて参りましょうよ」
提灯持ちは、火打道具をさぐっているものらしい。
「よせよせ、提灯で足許を見られるような、兄さんとは兄さんが違うんだぞ」
りきみかえっているのは、
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