しむかいの影法師を、ちらりと睨《にら》んだ者がこちと[#「こちと」に傍点]等の仲間にあったのだ、そうしてその一人が、両国橋の女軽業の太夫元のお角さんとやらに似ていたとか、いなかったとか、岡焼《おかやき》めらが騒いでいるんだから始末におえねえ」
「え、そりゃお安くないんですね、両国橋の女軽業の何とやらのお角さんといえば、多分この辺にいるお婆さんのことでしょうけれど、今時こんなお婆さんを相手にする茶人があるというのは、頼もしいことですね」
「実際、頼もしいんだから驚きまさあね。しかし、お婆さんはかわいそうですよ、年増盛りのハチ切れそうなのを捉まえて、お婆さんはかわいそうだね」
「まあ、ようござんす、どのみち浮名《うきな》を立てられるうちが、人間の花ですからね」
「そりゃ花ですともさ。ですけれども、花もあんまり、こってりと咲かれると、よその花ながら嫉《ねた》ましくなるよ、ねえ大将」
「うむ」
「殿様も福兄さんも、なんだか奥歯にはさまるような言い方をなさるから、わたしゃ、どうも痛くない腹を探られているようで小焦《こじれ》ったくってたまりません、わたしの身に後ろ暗いことがあるようでしたら、ハッキ
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