な文言であります。女の名は東雲《しののめ》とあって、宛名は片柳様となっていました。片柳の名は、兵馬が好んで用うる変名であり、東雲というのは、吉原のなにがし楼かにいる遊女の源氏名に違いない。お松はそれが悲しくもなり、腹立たしくもなって、その手紙を引裂いてやろうかと思いました。
 その遊女も憎らしいけれど、兵馬さんほどの人が、どうしてまたそんな狐のような女に、脆《もろ》くも溺れるようになったのか、あの人の心に天魔が魅入《みい》ったと思うよりほかはなく、それが口惜《くや》しくて口惜しくてなりません。といって、よく考えてみれば、こうして自分というものがお傍におりながら、そんな仇《あだ》し女に兵馬さんの心が移るようにしたのは、やはり自分が足りないからだと思うと、どうも残念でたまりません。どうかして、再び兵馬さんの心を、その女から取り戻さなければならないが、あちらは人を誑《たぶらか》すことを商売にしている人。その腕にかけては、とても太刀打ちのできないわたしであるかと思うと、お松は曾《かつ》て知らなかった嫉《ねた》ましさに、身悶《みもだ》えをさえするのでありました。寝られないから、お君の病気の容態を
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