、国家のために大した働きをなすのだが、惜しいものだ。あの男はいったい、今どこにいるか知らん、滝の川以来、もう一度会って話したいと思っていたが、ついにその所在を知ることができなかった、これも残念」
 南条力は一種の感慨と、軒昂《けんこう》たる意気を眉宇《びう》の間《かん》に現わしてこう申します。
 神奈川の宿の外れまで二人を送って別れた宇津木兵馬は、その帰りに神奈川の町の中へ入ってみると、そこにも目を驚かすものが多くありました。今まで京都や江戸で見聞した気分とは、まるっきり違った気分に打たれないわけにはゆきませんでした。神奈川の七軒町へ来ると、大きな一構えの建築を見出して屋根の上をながめると、横文字で、No. 9 と記してあります。兵馬はそれを見て、ははあ、これが有名なナンバーナインというものだなと思いました。兵馬はここで岩亀楼《がんきろう》の喜遊という遊女が、外国人に肌を触れることをいやがって、「露をだに厭《いと》ふ大和《やまと》の女郎花《おみなへし》、降るあめりかに袖は濡らさじ」という歌を詠《よ》んで自害したという話を思い出しました。しかしここへ来て見ると、降るアメリカも、意気なイギ
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