のなりゆきまで漸く聞き出すことができました。その盲目の客が移されたという別室へ来て見れば、夜具と蒲団がそのままにあるばかりで、人の気配はありません。この客は道庵先生が乗って来た切棒の駕籠にうつされて、その駕籠|側《わき》には梯子を持った小兵《こひょう》の男、天から降ったか地から湧いたか、遽《にわ》かに騒動の場へ現われて、多数の歩兵隊を相手に大格闘をした男が附いて門を出てしまったのは、騒動が鎮まったのとほぼ同じくらいの時刻だということでありました。
 これだけのことを兵馬とお角が尋ね上げた時分には、もう夜が明け渡っていました。
 そこでお角と共に長者町へ急ぐことにきめました。お角は兵馬が何故に自分と同じ人を深く尋ねるのだか、それを知ることができませんけれども、自分としてはぜひとも尋ね出して染井の屋敷へ帰らなければならないと思って、どこまでも兵馬と行動を共に、土手から二挺の駕籠を雇って長者町へ飛ばせました。
 長者町へ着いて見ると、道庵先生は帰っているにはいるが寝込んでしまって、容易に起きないのを起して様子をたずねると、いっこう要領を得ません。
 あんぽつ[#「あんぽつ」に傍点]に乗せて盲
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