して聞えぬ一言であるという者もあります。老女の言葉の裏には、我々を三千石以下と見ているものらしい。不肖《ふしょう》ながら我々、未来の大望《たいもう》を抱いて国を去って奔走する目的は、三千や一万のところにあるのではない。それを承知で我々を世話して置くはずの老女の口から、なれるものなら三千石になってみろと言わぬばかりの言い分は、心外であると論ずる者もありました。
「ナニ、そういうつもりで老女殿が三千石と言ったのではあるまい、何か他に意味があることであろう」
と言いなだめる者もありました。
三千石の意味の不徹底であったところから議論が沸騰して、それからお君のことを呼ぶのに三千石の美人と呼ぶように、この一座で誰が呼びはじめたともなく、そういうことになりました。
三千石の美人。こうして半ば無邪気な閑話の材料となっている間はよいけれど、もし、これらの血の気の多い者共のうちに、真剣に思いをかける者が出来たら危険でないこともあるまい。老女の睨《にら》みが利いていて、食客連が相当の体面を重んじている間はよいけれど、それを蹂躙《じゅうりん》して悔いないほどの無法者が現われた時は、やはり危険でないという
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