で向うを向いて、着物を着て、帯を締めていた小男は、さっさと歩き出してしまいました。その小男が歩き出した途端に、簾の中から見ていた娘は、
「おや?」
と言って驚きました。再び篤《とく》と見直そうとした時に、
「お松様、お松様」
 奥の方で呼ぶ声がします。
「はい」
 表へ駈け出そうとした娘は奥を振返りました。この娘はすなわちお松であります。

         十二

「お君さん」
と言って、お君がじっと物を考えているところへお松が入って来ました。お君がこうして遣《や》る瀬《せ》ない胸をいだいて物思いに沈んでいる時にも、お松はものに屈託《くったく》しない晴れやかな面《かお》をして、
「わたしは今、珍らしい人に逢いました、たしかにそうだろうと思いますわ」
「それはどなた」
 お君もまたお松の晴れやかな調子につりこまれて、美しい笑顔を見せました。
「当ててごらんなさい」
「誰でしょう」
「お前様の、いちばん仲のよいお友達」
「わたしのいちばん仲のよいお友達?」
と言ってお君は美しい眉をひそめました。仲の善いにも悪いにも、このお松をほかにしては、友達らしい友達を持たぬ自分の身を顧みて、お松の言
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