、ようやくに重荷を卸《おろ》した思いをしました。お松の話を聞いてみれば、若い女を預けて、少しも心置きのないのは実にこの老女である。求めて探しても斯様《かよう》な親船は無かろうのに、偶然それを発見し得たことの仕合せを、兵馬は雀躍《こおどり》して欣《よろこ》ばないわけにはゆきません。
その夜は南条と共にこの家に枕を並べて寝《い》ね、翌朝早々に兵馬は王子へ帰りました。帰って見ればあの事件。
しかし、幸いにお君の身の上は無事で、兵馬と共に扇屋を引払って落着いたところが、この家であることは申すまでもありません。
十
ここに例の長者町の道庵先生の近況について、悲しむべき報道を齎《もたら》さねばなりません。
それはほかならぬ道庵先生が不憫《ふびん》なことに、その筋から手錠三十日間というお灸《きゅう》を据《す》えられて、屋敷に呻吟《しんぎん》しているということであります。
道庵ともあるべきものが、なぜこんな目に逢わされたかというに、その径路《すじみち》を一通り聞けば、なるほどと思われないこともありません。
道庵の罪は、単に鰡八《ぼらはち》に反抗したというだけではありま
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