で来ました。
「そーれ、そっちへ行った」
「やーれ、こっちへ行った」
 箒坊主や、味噌摺坊主《みそすりぼうず》は、いよいよ面白がってここまで追い詰めて来ると、
「何だ何だ、やかましい」
 慢心和尚は、大きな声で右の坊主どもをたしなめます。
「和尚様、狂犬《やまいぬ》が飛び込みましたぜ、西の方から牢破りをして逃げた狂犬ですぜ、それが今、このお寺の中へ逃げ込んでしまいました、だからこうして追い飛ばしているのでございます」
「よけいなことをするな、そんなことをする暇に、味噌でもすれ」
 慢心和尚は、群がっている大坊主や小坊主を叱り飛ばして、
「クロか、クロか、さあ来い、来い」
と言って手招ぎました。
 人に狎《な》れることの少ないムク犬が、招かれた慢心和尚の面《かお》をじっと見つめながら、尾を振ってそこへキチンと跪《かしこ》まったのは、物の不思議です。
「狂犬であるか、狂犬でないか、眼つきを見ればすぐわかるじゃ、この犬を狂犬と見る貴様たちの方に、よっぽどヤマしいところがある」
 慢心和尚は、こんな苦しい洒落《しゃれ》を言いながら、いま食べてしまった黒塗のお椀を取って、傍にいた給仕の小坊主に、
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