馬鹿者」
主膳は肩先に療治を受けて布を捲いてもらいながら、そのにえたつような憤懣《ふんまん》を、犬殺しどもの頭から浴びせかけました。犬殺しどもは恐れ入って顔の色はありません。
「もとはと言えば貴様たちの未熟だ、犬にも劣った畜生め、どうしてくりょう」
神尾主膳の眼にキラキラと黄色い色が見えたかと思うと、矢庭《やにわ》にその突いていた槍を取り直し、
「馬鹿め!」
恐れ入っていた長太を覘《ねら》って、胸許《むなもと》からグサとその槍を突き通しました。
「あっ! 殿様!」
長太は、のたうち廻って苦しみました。その手には胸許を突き貫《ぬ》かれた槍の柄をしかと握り、
「殿様、あんまり……そりゃ」
と言って、あとは言えないで七転八倒の苦しみであります。
「殿様、そりゃ、あんまりお情けのうございます」
長太の言えないところを長吉が引取って、眼の色を変え犬鎌を持って立ち上るところを、
「汝《おの》れも!」
と言って、長太の胸から抜いた槍で、また長吉の胸をグサと一突き。
神尾の下屋敷から脱することを得たムク犬は、山へも逃げず、里へも逃げず、首に鎖と縄を引張ったまま只走《ひたばし》りに走って、
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