に、縁の上からヒラリと庭へ飛び下りましたから、
「神尾殿、お危のうござる」
 皆が留めたけれども、主膳は留まりませんでした。りゅうりゅうとその槍をしごいて、いま身震いして立ち迷うているムク犬の前に、風を切ってその槍を突き出しました。
 神尾主膳といえども武術には、また一通りの手腕のあるものであります。怒りに乗じて突き出す槍が、かなり鋭いものであることは申すまでもありません。
 ムク犬は後ろへ退《しさ》ってその槍の鉾先《ほこさき》を避けました。勢い込んだ神尾主膳は、逃《のが》さじとそれを突っかけます。
 酒の勢いを仮《か》る主膳の勇気は、一座のお客を歎賞せしめるより、寧《むし》ろその無謀に驚かせました。しかし、主人がこうして出たのに、客も黙って引込んではいられないのであります。ぜひなく刀を押取って主膳の後ろ、或いはその左右から応援に出かけました。錆槍《さびやり》を借りて横合より突っかける者もありました。
 ムクが主膳の槍先を避けたのは、或いはこの家の主人に遠慮をして避けたのかも知れません。好んで人に喰いつくものでないことを示すために、最初しかるべき逃げ場を求めていたのかも知れません。しか
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