間跳ね飛ばされました。
 事態穏かならずと見て取った見物の武士たちは総立ちです。
 さすがに女子供ではなかったから、犬が狂い出したというて、逃げ迷うものはありませんでしたけれど、事の態《てい》に安からずと思って立ち上りました。
 二人の犬殺しを振り飛ばしたムク犬は、一散に走ろうとして――その逃げ場を見廻したもののようでしたけれど、いずれの口も固められて、逃れ出でんとするところのないのを見て、烈しい唸り声と共に両足を揃えて、暫らく立っていました。
「こん畜生!」
 二人の犬殺しは、いよいよ血迷うて、手に手に腰に差していた大きな犬鎌を抜いて打振り廻して、噛まれた創《きず》や摺創《すりきず》で血塗《ちまみ》れになりつつ、当途《あてど》もなく犬鎌を振り廻して騒ぎ立つ有様は、犬よりも人の方が狂い出したようであります。
 この時、神尾主膳は――よせばよかったのですけれども、来客の手前と、例の通り酒気を帯びていたのだから嚇《かっ》と怒って、真先に自分が長押《なげし》から九尺柄の槍を押取《おっと》りました。自身、手を下すまでのこともなかろうに、憤怒《ふんぬ》のあまり、神尾主膳は九尺柄の槍の鞘を払うと共
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