ままぷいと廊下の縁の下を潜《くぐ》り抜けて、どこかへ行ってしまいました。
駒井能登守が役所へ出かけたそのあとで、お君は部屋へ行ってホッと息をついて、微醺《びくん》の面《おもて》を両手で隠しました。
障子の外には日当りがよくて、ここにも梅の咲きかかった枝ぶりが、面白く障子にうつっています。
お君は脇息《きょうそく》の上に両肱《りょうひじ》を置いて、暫らくの間、熱《ほて》る面を押隠していましたが、そのうちにウトウトと眠気がさしてきました。
「お冷水《ひや》を持って来て」
「はい」
次の間で女中が返事をすると、まもなくギヤマンの美しい杯《さかずき》が蒔絵《まきえ》の盆の上に載せられて、若い女中の手で運ばれました。ギヤマンの中には玉のような清水がいっぱい満たされてあります。お君はそのお冷水《ひや》を口に当てながら、
「わたしは眠いから少し休みたい、お前、床を展《の》べておくれ」
「畏《かしこ》まりました」
「それから、あの犬に何かやっておくれかい」
「いいえ、まだ」
「忘れないように」
「畏まりました」
女中が出て行った後で、お君は水を一口飲んでギヤマンを火鉢の傍へ置き、それから鏡台
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