見ると、それは最初にお松をして破顔せしめたと同じ記号によって、病中の兵馬をも微笑させました。その一端には「十八文」と焼印がしてあるからです。
「十八文」の因縁は、兵馬もまた微笑することができるけれども、それについてもお松ほどに、たちどころに納得がゆかないのは、これがどうしてここへ来るようになったか、それともう一つは、何者がここへ持って来たかということであります。
 その不安を解決するには恰好なこの結《むす》び状《ぶみ》、兵馬は少しく身を起き上らせて、直ちに結び状の結び目を解きました。解いて見ると二枚の手紙が合せてあります。それを別々にして見ると、大きな方は例の道庵先生の処方箋でありましたが、小さな方は女文字であったから、兵馬をしていとど不審の眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》らせました。
 道庵先生の「もろこし我朝に……」は兵馬も苦笑いして、そっと側《わき》に置き、その女文字の一通を読んでみると、それはお松からの手紙でありましたから、兵馬も我を忘れて読まないわけにはゆきません。あまり長い文句ではありませんでしたけれども、一別以来の大要が書いてありました。そうして今は
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