で熱燗《あつかん》を注文して飲みました。
ここでは前からガヤガヤと折助連中が馬鹿話をしておりましたから、新たに逃げ込んだ三人の話し声も、それに紛《まぎ》れて何を話したのだかわかりませんでしたけれども、彼等は惣菜《そうざい》で熱燗をひっかけると、長くはこの場に留《とど》まらないで、また三人打連れて飛び出してしまいました。それで彼等は雪の中を威勢よく駆け出して、二丁目を真直ぐに飛んで、やがて役割の市五郎の屋敷へ飛び込んでしまいました。
それはそうとして、米友は彼等を叱り飛ばして、また鉄砲を担いで自分の部屋としてあてがわれたところへ来て、鉄砲を卸して大事に立てかけて、それから蓑《みの》を脱いで外へ向けてよく振いました。蓑に積っていた雪をパッパと振って壁へかけ、それから、腰を卸して雑巾《ぞうきん》で足を拭きはじめました。
足を拭いている時も、米友の面《かお》は曇っていました。そこへ不意に鼻を鳴らし、尾を振って現われたのはムク犬であります。
「ムク」
米友は足を拭きかけた雑巾の手を休めて、ムク犬をながめました。
「雪が降ると手前《てめえ》も機嫌がいいな」
ムクは米友の前に膝を折って両手
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