を囲んでいる女中たちは泣き出しそうです。
宇津木兵馬のあとを追うていた二人の同心は、この騒ぎでも兵馬を見捨てて、その騒ぎの方へ出向くことを躊躇《ちゅうちょ》しました。
「左様、それでは」
一人が一人の耳に口をつけて囁《ささや》くと、囁いた方が人を分けて前へ進み出し、囁かれた方は、もとのままに兵馬を監視しているらしい。
この時は、すべての催しが済んで花火が盛んに揚りました。崩れ立った人の足、帰りに向く人も、出かけて来た人も、そこで食い留められ、吸い寄せられて、押す、踏む、倒れる、泣く、叫ぶ、喧嘩ならぬところに喧嘩以上の動揺の起ることは免《まぬが》れないのであります。
喧嘩の起りはたった一人の仕業《しわざ》らしいが、その及ぼすところが怖ろしいと、心あるものはそれを憂えていました。
ここで青地錦の袋へ入れた刀を口に啣《くわ》えて、裸体《はだか》で荒れ狂っている片腕の男ががんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵であることは申すまでもありません。
百蔵一人がエライわけではないけれど、百蔵一人のために大混乱を引起して、その大混乱が阿鼻叫喚《あびきょうかん》の世界に変ろうとする時でありまし
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