がら、
「お君様、あなたの殿様からおいでなされたお方は、まだ若いお方でございますね」
お松の蔭に隠れるようにしていたお君は、小さい声で、
「主人のお小姓でございます」
と言っている時に、その人は桟敷の下へ来て綾藺笠《あやいがさ》を振りかたげて桟敷の上を見上げました。紫地錦《むらさきじにしき》の直垂《ひたたれ》を着て、綴《つづれ》の錦に金立枠《きんたてわく》の弓小手《ゆごて》をつけて、白重籐《しろしげとう》の弓を持っていましたが、今なにげなく振仰いで笠の中から見た面を、お松は早くも認めて、
「お君様」
「はい」
「あなた様のお家のお方は、薄化粧をしておいでになりました」
「ごらんになりまして?」
「確かに……」
「その通りでありまする」
お君とお松とは頷き合いました。その時にお松の心が遽《にわ》かに勇みをなしました。
十四
古式に装《よそお》うた花やかな十六騎が、南の隅に来てハタと歩みを止めた時に、馬場本《ばばもと》に設けられた記録所から、赤の直垂をつけて太刀を佩《は》き、立烏帽子に沓《くつ》を穿いた侍が一人、徐々《しずしず》と歩んで出て来ました。十六人は、そ
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