なり道楽の経験のある者もあるのであります。また意外に学問の出来る者もあるのであります。これから馬場へ押し出そうとする折助連中の面《かお》ぶれを見ても、その折助として雑多な性格を見ることができるのであります。
そのなかには、貸本の筆耕をして飲代《のみしろ》にありついているのもありました。四書五経の講義ができるぐらいのものもありました。
江戸で芝居という芝居を見つくしたと自慢するのもありました。寄席《よせ》という寄席に通いつくしたと得意なのもありました。なかには淫売婦《じごく》という淫売婦を買いつくしたと言って威張るのもありました。
そのほか、折助のうちには、なかなかの批評家もおりました、皮肉屋もおりました。今日のような時には、その連中はじっとしていられないのであります。またそれをじっとしておらせようなものならば、彼等は折助式の反抗と復讐をすることに、抜け目のあるものではありません。
それ故に、何かの催しのある時には、この折助に渡りをつけることを忘れてはなりません。今日の流鏑馬《やぶさめ》は、官民合同とはいうようなものの官僚側の主催のようなものだから、そんなに折助に憚《はばか》ると
前へ
次へ
全207ページ中160ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング