でありました。その奥方連も、若い奥方連がこの日は多く見えていました。その若い美しい奥方連の中に、太田筑前守の奥方ばかり四十を越した年配の、権《けん》のありそうな婦人であります。
両支配の次の桟敷には、神尾主膳がその同役や組下の連中と共に、ほとんど水入らずで一つの桟敷を占領していました。
ここでは主膳が大将気取りで、座中には酒肴を置いて、主膳は真中に、いま刷物《すりもの》の競馬の番組を見ていました。その他の連中は番組を見たり冗談を言ったり、対岸の桟敷と、場内に稲麻竹葦《とうまちくい》と集まった群集をながめていたりして、競馬の始まるのを待っています。
そのうちに、人がどよめいたから、主膳はなにげなく番組の刷物を眼からはなして馬場の方を見ると、今、駒井能登守が前を通り過ぎたところです。
能登守の男ぶりが、場内の人気となって騒がれている時でありました。それを見ると神尾主膳は、何ともなしにグッと癪《しゃく》にさわりました。それで険《けわ》しい眼つきで能登守の後ろ姿と、それを見送る群集とを睨めました。
神尾主膳にとっては、駒井能登守というものの総てが癪に触るのであります。その第一が、自分
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