う、客分の待遇で迎えて来たものです。

 宇津木兵馬はその時分、もうすっかり身体が癒《なお》っておりました。身体は癒ったが、まだここを立つというわけにはゆきません。
 今は日に増し元気も血色もよくなってゆくのに、兵馬はひとりその部屋で机に向って読書に耽《ふけ》っておりました。
 その時に、二階へ上って来る人の足音を聞きました。それが二人の足音であった時には、お君がお松の手引をして来るのであるし、それが一人の足音である時は、能登守が見舞に見えるのが例でありました。今は一つの足音であったから、能登守にきまっていると、兵馬は襟を正して待っていると、
「兵馬どの」
 果してそれは能登守でありました。
「これはこれは」
と言って兵馬は、褥《しとね》を辷《すべ》って礼をしました。能登守はいま研究室から来たものと見えて、筒袖羽織に袴であります。
「退屈でござろうな」
「こうして読書を致しておりますれば、さのみ退屈にも感じませぬ」
「毎朝一度ずつは、庭へ出て散歩をなさるがよかろう。いずれ近いうちには、自由の身にして上げたい、もう暫くこのままで辛抱されるように」
「有難きことに存じまする、なにぶんのお指
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