。
殊に主人の駒井能登守が砲術の名手として聞えた人であるだけに、その家中から、ロクでもない人間を出してしまっては、それこそ取返しのつかない名折れであると思って、重役や側用人たちは、もうそのことで心配していました。
それがために例の重役や側用人らが苦心を重ねているうちに、どうしても聞き捨てにならぬことが出来たと見えて、重役が主人の許《もと》へ出て来ました。
「このたびの流鏑馬のお人定めは、誰をお指図でござりましょうや……就きまして我々共、容易ならぬ心配を致しおりまする。と申すのは、かの神尾主膳殿の許に、信州浪人とやら申す至って弓矢の上手が昨今滞在の由にござりまする、それは必ずやこのたびの流鏑馬を当て込んで、例の意地を立て、わが手に功名を納めんとの下心と相見えまする。あの神尾主膳殿は何の宿意あってか、いちいち当家に楯《たて》をつくようなことばかりを致されまする。よってこのたびの流鏑馬の催しに、功名をわが手に納めんとの下心より、一層、当家に対して、腹黒き計略が歴々《ありあり》と見え透くようでござりまする。それ故に、このたびのお人定めは疎略に相成りませぬ、万一のことがありますれば、お家の恥
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