へ行ってそれを掻《か》き立てた時に、頭巾から洩れる面体《めんてい》をうかがえば、それが神尾主膳であったことは、意外のようで意外でありますまい。
主膳はソロソロと昏睡《こんすい》している幸内の枕許へ寄って来て、その寝顔を暫らくのあいだ見ていました。そうしてニッとして残忍な笑い方をしましたが、背中を行燈の方に向けて、幸内の枕許へ立ちはだかるようにしてしまったから、何をするのだか挙動が少しもわからないが、ただ懐《ふところ》から縄を出して扱《しご》くような素振《そぶり》をしたり、またそこらにあったものを引き寄せるような仕事をしているうちに、寝ていた幸内が、
「ウーン」
とうなり出したのを、主膳はその頭の上から蒲団《ふとん》を被せて抑えましたから、幸内のうなる声は圧《お》し殺されたように絶えてしまいました。
それで静かになってしまうと、主膳はまた行燈の方へ向き直りましたが、幸内は蒲団を被せられてしまっているから、どうなったのかサッパリわかりません。ただ前よりは一層おとなしくなってしまったようであります。行燈の方へ向き直った主膳は、思わず小さな声で、
「あっ」
と言って自分の両の手先を見ました
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