いうけれども、何をしているんだか知れたものじゃないと、米友はいいかげんにたかを括《くく》りました。
「おや、妙なことをお言いだね」
突然と下から聞えたのは、お角の声であります。
「だからどうしようと言うんだ」
それは男の声。
「どうもしやしない、これからその神尾主膳とやらのお邸へ、わたしが出向いて行って、ちゃあんと談判して来るからいい」
「そいつは面白い」
「面白かろうさ。そうしてそのついでに、百という男は、がんりき[#「がんりき」に傍点]と二つ名前の男で、切り落された片一方の手には甲州入墨……」
「何を言ってやがるんだ」
下の男と女は、いさかいになったのを、米友は聞き咎《とが》めてしまいました。
しかし、高い声はそれだけで止んで、男女ともに急に押黙ってしまいました。
その翌朝、あのがんりき[#「がんりき」に傍点]の何とやらいう小悪党に会わなければならないのだなと思いながら、米友は下へ降りて見ると、お角と女中のほかには誰もいませんでした。
女中の世話で朝飯を食べてしまっても、昨夜の男は姿を見せませんでした。お角もなにくわぬ面《かお》をしていました。米友もそのことは聞きもしな
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