、お前がこちらへ来るようになった心持は、大概わたしの方に当りがついているんだから」
米友はそこで黙ってしまいました。どこまで行っても受身で、根っから気焔が上らないで、先《せん》を打たれてしまうようなあんばいです。
袖切坂のあたりは淋しいところで、ことに右手はお仕置場《しおきば》です。袖切坂はそんなに大した坂ではないけれど、そこを半分ほど上った時に、
「おや」
と言って、どうしたハズミか、先に立って行ったお角が坂の中途で転《ころ》びました。物に躓《つまず》いて前へのめ[#「のめ」に傍点]ったのであります。
「危ねえ、危ねえ」
米友はそれを抱き起すと、
「ああ、悪いところで転んでしまった」
見ればお角の下駄の鼻緒が切れてしまっています。それをお角は口惜しそうに手に取ると、はずみをつけてポンと傍《かたえ》のお仕置場の藪《やぶ》の中へ抛《ほう》り込んで、
「口惜しい、うっかりしていたもんだから、袖切坂で転んでしまった」
キリキリと歯を噛んで口惜しがりました。お角の腹の立て方は、わずかに転んだための癇癪《かんしゃく》としては、あまり仰山でありました。
「怪我をしたのかね、かまいたち[#
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