府にいるということをすらおたがいに知ってはおりません。
 米友の口から聞けば聞かれるのであったろうけれど、米友はこのことをお松に語りませんでした。お松は外へ出る機会が多少あっても、その後のお君は屋敷より外へ、ほとんど一歩も踏み出したことはありませんでした。それ故、二人はここで偶然に会うまで、その健在をすらも忘れておりました。
 今見れば、お松は品のよい御殿女中の作りです。これはお松としてそうありそうな身の上であるけれども、お君がこうして奥向きの立派な身なりをしていようとは、お松には思い設けぬことでありました。お君は、久しぶりで会った人に、涙を見せまいとして元気を作りました。お松は、人の留守へ入って来たきまりの悪いのを言いわけするように、
「わたしはここにいる若い衆さんに、お頼み申してあることがあります故、つい無作法にこうやって参りました、それをここであなたにお目にかかろうとは思いませんでした、どうして、いつごろからこちら様においでなさいますの」
 お松は昔の朋輩《ほうばい》の心持で尋ねました。
「これにはいろいろと長いお話がありますから、後でゆっくり申し上げましょう。そして、お松さん、
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