たというものだ」
「うむ、うむ」
「そのほかに、久留米の神主で、あの慷慨家《こうがいか》の真木和泉《まきいずみ》が加わる、それから中山卿のお附であった池、枚岡《ひらおか》、大沢の三人――中山卿は長州で亡《な》くなられたそうじゃ。大和の十津川から浪華《なにわ》を経て、長州へおいでになったが、そこで亡くなられたということじゃ。まだ十九か二十のお歳であろうに、お痛わしいことな」
「そうか、中山侍従は長州で亡くなられたか」
「御病気で亡くなられたか、または不慮の御災難であったか、その辺は更にわからぬ。してその中山卿のお附であった池、枚岡、大沢の三人も加わってよ、浪華へ着くと、同藩の仲間や諸藩の脱走が走《は》せ加わったから、兵を二手に分け、一手は船で山崎から、一手は陸を伏見へのぼって行った。何しろ兵器を携《たずさ》え、旗を立て、隊伍を乱さず上って行くのだから、京都も騒がずにはいられないのじゃ」
「なるほど、なるほど」
「それにまた国司信濃や益田右衛門介らが鎮撫《ちんぶ》を名として馳《は》せ加わって、とうとう御所へ押しかけてしまった、そこで会津、一橋、薩州の兵を相手に、畏《かしこ》くも宮闕《きゅう
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