大菩薩峠
如法闇夜の巻
中里介山

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)絨氈《じゅうたん》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一声|怒鳴《どな》れば

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「手へん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と
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         一

 お君は、やがて駒井能登守の居間へ通されました。
 能登守の居間というのは、そこへ案内されたお君が異様に感じたばかりでなく、誰でもこの居間へ来たものは、異様の念に打たれないわけにはゆかないものであります。それは畳ならば六十畳ほどの広さを持った居間に、畳を敷いてあるのでなく、板張りにして絨氈《じゅうたん》のようなものが敷き詰められてありました。
 その広い室の中央と片隅とに卓子《テーブル》が置かれて、その周囲には椅子が置かれて、四方には明るく窓が切ってあります。
 長押《なげし》の上や壁の間には、いくつもの額が掲げられてありますが、どの額も、軍艦や大砲やまた見慣れない風景や建築の図案であ
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