置きをして、自分は直ぐ戻るような面をしてどこへか出かけて行きました。
十七
噂の通り米友は大湊の浜でつかまってしまいました。
竿を持たせてこそ米友だけれど、素手《すで》で水の中を潜《くぐ》って来たところを折重なって押えられたのだから、めざましい抵抗も試むることができないで縄にかかってしまいました。
いろいろに調べられたけれどもついに白状しません。白状すべきことがないから白状しないのを、それを剛情我慢と憎《にく》まれて、よけいに苛《いじ》められるものですから、米友は意地になって役人をてこずらせてしまいました。
お玉の家にあった印籠と二十両の金とがただ一つの証拠となって、それについて弁明すべきお玉がいないのだから、調方《しらべかた》の有利に解釈されて、米友にはいよいよ不利益な証拠になってしまいました。
そこで米友は、ついに盗人《ぬすびと》と、それから町を騒がしたという二つの罪でお仕置《しおき》を受けることになりました。
縄がキリキリと肉へ食い込んで、身体《からだ》の各部分が瓢箪《ひょうたん》のようになっている米友は、隠《かくれ》ヶ岡《おか》へ引っぱられて行
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