大菩薩峠
竜神の巻
中里介山

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)勃発《ぼっぱつ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)松本|奎堂《けいどう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「金+延」、第3水準1−93−16]
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         一

 天誅組がいよいよ勃発《ぼっぱつ》したのは、その年の八月のことでありました。十七日には大和《やまと》五条の代官鈴木源内を斬って血祭りにし、その二十八日は、いよいよ総勢五百余人で同国高取の城を攻めた日。その翌日、十津川《とつがわ》へ退いて、都合《つごう》二千余人で立籠《たてこも》った時の勢いは大いに振《ふる》ったもので、この分ならば都へ攻め上り、君を助けて幕府を倒すこと近きにありと勇み立ち、よく戦いもしたけれど、紀州、藤堂、彦根、郡山、四藩の大兵を引受けてみて、力が足りないのは是非もないことでした。
 侍従中山忠光は浪花《なにわ》へ落ち、松本|奎堂《けいどう》、藤本鉄石、吉村寅太郎らの勇士は
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