大菩薩峠
鈴鹿山の巻
中里介山
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)浜《はま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)故郷|八幡《やわた》村あたりは
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+主」、第3水準1−87−40]
−−
一
「浜《はま》、雪は積ったか」
炬燵《こたつ》に仮睡《かりね》していた机竜之助は、ふと眼をあいてだるそうな声。
「はい、さっきから少しもやまず、ごらんなされ、五寸も積りました」
「うむ……だいぶ大きなのが降り出した」
「大きなのが降ると、ほどなくやむと申します」
「この分ではなかなかやみそうもない、今日一日降りつづくであろう」
「降っているうちは見事でありますが、降ったあとの道が困りますなあ」
「あとが悪い――」
竜之助は横になったまま、郁太郎《いくたろう》に乳をのませている差向《さしむか》いの炬燵越しにお浜を見て、
「あとの悪いものは雪ばかりではない――浮世《うきよ》のことはみんな
次へ
全87ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング