研究報告と討論(一九三四―五年)を編纂したもので、報告者はルカーチ(最初の二八頁)、討論者の主なるものはシルレル・ヌシノフ・リフシッツ・ペリベルゼフ・等(総数十数名)。報告者ルカーチによると、小説即ちロマンの特色は夫がブルジョア社会の文学ジャンルであるという処に存する。ロマンはエポス(叙事詩――古代英雄詩)に対比させられる。古代ギリシアのエポスは個人と社会とが分裂していない時代の意識を反映するに適した文学ジャンルであって、そこでは、個人が社会から圧迫されて自己の身辺を中心とし散文生活を送らねばならぬというような社会条件はまだ存在しないから、英雄というものが文学的に可能であり、英雄の物語りが詩的表現を取ることが出来る。之がエポスである。然るに、ブルジョアジーの社会に於ては、個人は社会から分裂し、個人はもはや社会を代表する英雄ではあり得なくなる。英雄譚は不可能となる。個人は社会によって圧迫されるからだ。ここにロマンがこの時代の特有な文学ジャンルとなる所以がある。第一はブルジョア社会勃興期のロマン(ラブレエやセルバンテス)、その様式的特徴はリアリスティックな空想性[#「リアリスティックな空想
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