uブック・レヴュー」尊重主義を引き続き実行している。その内容は別の問題として、編集上の精神は注目されていい。現に『文学界』は多少之に類似したブック・レヴューを試みるようになったし、『新潮』と『文芸』とも亦、ブック・レヴューを正面に押し出すようになった。『科学ペン』亦そうである。文化雑誌としては当然なことであるが、わが意を得たものと云わねばならぬ。
 ではブック・レヴューとは何か、というような抑々の問題になると、本書の「ブック・レヴュー論」という文章もあって、今ここに評説する余裕はないと思うが、要するにブック・レヴューなるものは、クリティシズム[#「クリティシズム」に傍点](批評・評論)の一つの分野か、一つのジャンル、であると思われるのである。出版物としての本を紹介批評するわけであるが、問題はその本が出版されることの文化上の意義、その本に含まれている思想や見解や研究成果の文化上の意義、というようなことを評論することの内に、横たわるのである。つまり出版された本を手段として、その背景をなす文化的実質を評論する、ということがブック・レヴューの意味で、そういう評論のジャンルや領野が、「ブック・レ
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