て、政治論または時事論評と大して変った内容のものでないことは、寧ろよい特色だと思われる。ところで政治論の一群は言論界の苦労人であることを示すに充分である。時事論評にはやや一応の常識に流れたものも多いが、健康なリベラリストとしての強靱性を示していることに変りはない。婦人論や雑評もまた大体人物論に帰するが、これはうらやましくも最も余裕綽々たるもので、全く面白い。
 阿部氏の最も得意とするところはつまり人物論であるという結論に、私はこの本を読みながら到着した。そしてその人物論が、実に現代世相を物語るそれぞれの短篇作品になっているというわけだ。杉山平助風の文学者的人間論とも違えば、野依秀市式の政治屋流人物観とも異る。正に阿部流人物論の型を確立したものといってよい。
[#改段]


 10[#「10」は縦中横] 入沢宗寿著『日本教育の伝統と建設』


 日本の伝統の問題、単にこの伝統なるものをかつぎ回ることではなくて、実際問題として之と取組まねばならぬという関係、夫は教育に連関して初めて切実になる問題だ。日本伝統なるものは教育に際して初めて実際問題となると思う。そういう意味で私は本書の書評を引き
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