論の(マルクス主義は除くとして)最も影響の大きいものを与えている。シュティルナーのイデオロギーはすでにマルクスによって取り上げられているし、ニーチェの如きは、主人の道徳と奴隷の道徳とを対比させている。
 さて以上挙げた思想家達のイデオロギー論は、彼等の夫々の一般的思想の内から浮き出た姿の下に捉えられている。そしてこの諸イデオロギー論そのものが夫々一つのイデオロギーとして、夫々の時代の経済的・政治的・社会的・文化的・地盤から、合理的に説明されるように、努力が払われている。――新明教授の叙述は各思想家の思想内容の内部的連関を明らかにする点に於て、中々優れた文学的手腕を示している。之に対比して、他の二人の著者は、唯物史観の定石を良心的に定式的に、踏もうと力めているように見受けられる。ただ、思想の根柢をなし背景をなす経済的・社会的・政治的・条件が、如何に思想そのものの機構にまで反映しなければならなかったかの説明に就いて、多少のギャップが気にかからぬでもない。
 各章を通じて見受けられる特色は、著者達がイデオロギー論を人間論[#「人間論」に傍点]との連関に於て捉えているという点にある。というのは
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