はさし当り夫を繰り返す外はない。――マキャヴェリはその『君主論』に於て、〔君主〕に必要な譎詐・欺瞞・狡知・を分析し、権謀術策の原理を授けているが、その結果は計らずも〔君主〕の陰険な心事を暴露すると共に、一般に人間性の虚偽性を暴露している。之は人間論的虚偽論[#「人間論的虚偽論」に傍点]に外ならない。新明教授はここにイデオロギー論の近世に於ける最初の企てを見て取る。之は同時に一種の心理学的イデオロギー論[#「心理学的イデオロギー論」に傍点]でもあるわけだ。
 ベーコンになると事情は少し異って来る。F・ベーコンのイデオロギー論は例のイドラ[#「イドラ」に傍点]の理論に外ならないが、之はマキャヴェリのものなどとは異って、もはや単なる人間論的・心理学的・なイデオロギー論又は虚偽論ではない。四つの偶像がどれも社会的関係から解明されているのである。だから之は、今日行なわれている意味でのイデオロギー・社会意識[#「社会意識」に傍点]・の理論の先駆をなすもので、ただ夫が社会の分析の上に積極的な基礎を置いていないために、遂に本当のイデオロギー論にまで展開しないで終ったものだ、というのである。
 フランス
前へ 次へ
全273ページ中195ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング